統合とは?/ セントラルファイナンス
[ 91] 統合失調症FAQ
[引用サイト] http://www2f.biglobe.ne.jp/~yasuq/schizophrenia2.htm
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「統合失調症って何なんだろう」「患者さんは非患者とどこが違うのだろう」「患者さんを悩ませる精神症状はどこから来るのだろう」...YASU-Q自身がかつて抱いていた素朴な疑問と,実際に患者さんからいただいた質問に,知識や経験が及ぶ限りの回答を与えたものです。 この病気の有病率*は,国を問わず大体0.5〜2%であり,決して珍しい病気ではありません。と言うか,ありふれた病気です。最近多い多いと大騒ぎされる「結核」や,だれでも耳にしたことのある「メニエル氏病」の有病率は0.02〜0.05%とこの病気の10分の1以下ですし,胃潰瘍・十二指腸潰瘍を併せた「消化性潰瘍」の有病率は1〜2%,「喘息」が3%ですから,大体これらの病気と同じくらい「よくある病気」ということになります。ですから,確かにあなたは患者さんと毎日どこかで出会っているはずです。そうと気づいていないだけで。 以前よく医学生や看護学生さんの病棟実習に立ち会いましたが,彼らは異口同音に「実際に患者さんに会って話してみると全然普通の人でビックリした」と言います。もちろん実習に付きあってくれる患者さんというのは経過の長い安定した患者さんがほとんどなので,彼らがもっと重症の患者さんに接していれば違う感想を持ったかもしれません。しかし,閉鎖病棟から何年も出たことがないというような患者さんでも,症状以外の話は結構普通にできます。私には今でも友人付き合いしているこの病気の患者さんがいますが,彼もわずかに症状は残っているものの他は全然普通の人です。 彼らは誤解され差別されるべき存在ではありません。またヘンに美化されるべき存在でもありません。彼らは普通の人です。統合失調症という病を負いそれに悩まされているだけで,一人の人間として私たちと本質的に何も変わるところはありません。私は小さいときから喘息という持病に悩まされ,常に一定のハンデを負ってきましたが,だからと言って喘息ではない人と別に本質的に変わるところはありません。それと同じことです。 しかし彼らが統合失調症という病を負っていることは事実です。そしてこの病気が簡単な病気ではないことも。 「統合失調症って何なんだろう」「患者さんは非患者とどこが違うのだろう」「患者さんを悩ませる精神症状はどこから来るのだろう」...以下のQ&Aは,私自身がかつて抱いていた素朴な疑問と,実際に患者さんからいただいた質問に,現在の私の知識や経験が及ぶ限りの回答を与えたものです。 A:躁うつ病と並んで代表的な「精神病」です。有病率は国を問わず大体0.5〜2%であり,ありふれた病気です。ギリシア時代より文献に記載されており,人間の歴史とともに歩んできた古くて新しい病気です。 私たち「正気」の人間は「狂気」を非常に恐れます。有効な治療法がなかったこともあり,この病気は「非常に恐ろしい」「不治の」病として恐れられ,中世時代には宗教裁判や魔女狩りの対象になったこともありました。(→こちらも見て) 近世になりやっと「脳の病気」であると認められるようになり,患者さんは隔離や拘禁ではなく「治療」の対象であるととらえられるようになりました。ロボトミー療法や様々なショック療法が考案されましたが決定的なものではなく,20世紀後半になりやっと有効な薬物が発見されました。現在も様々な薬物が開発され,副作用の少ない新しい薬物による治療法が定着しつつあります。 )。決して不治の怖い病気ではありません。それでも今なお,この病気に関する一般の人の認識は,特に日本では,中世時代とそう変わりありません。医療現場においてさえも,偏見や誤解がまかり通っており,患者さんの処遇改善は他の先進諸国と比べて大きく遅れています。私たちは患者さんと共にこういう日本の現状を何とかしていかなければ,と考えています。 A:大きく分けて「陽性症状」と「陰性症状」があります。陽性症状というのは,心の中に通常は見られない異常なはたらきが見られることで,陰性症状というのはその逆に,心の中に通常存在するはたらきが見られないか鈍っていることを言います。通常は自分が病気であることを認識しにくくなっています(これを「病識がない」と言います→こちらも見て)。 陽性症状というのは,具体的には,幻覚や妄想,知覚の歪み,独語・空笑,思考の中身が周囲に漏れているような感じ,外から身体や思考を操られるような体験(作為体験),思考や動作のまとまりのなさ,異常な興奮や緊張,などです。誰が見ても明らかに異常と分かる,はっきりした,表面的な症状と言えるでしょう。ただ,これらはこの病気以外にも見られることのある症状です(→こちらも見て)。 幻覚というのは,実際には存在しないはずのものが見えたり聞こえたり臭ったりすることで,この病気では特に,人の話し声として聞こえてくる「幻聴」が特異的です。多くは自分に対する悪口や噂の形をとり,直接自分に話しかけてくるものもあります。本人にはテレパシーや電波で話しかけてきているように感じられ,場合によってはその幻聴と会話することも可能です。もちろん,周りの人から見ると,一人でブツブツ話したり笑ったりしているように見えてしまいます(これを「独語」「空笑」と言います)。「電波系」という言葉もこのへんから来ています。 妄想というのは,強固な信念で,明らかに間違っているのに決して訂正されず,本人が確信しているものをいいます。私たちが,「あの人は私のこと嫌っててイジワルしているのかもしれない...」などと半信半疑に思っているのは妄想とは言いません。例えば,「○○が自分の才能を妬んで様々な嫌がらせをしてきている。電話は盗聴されているし,電子メールも全てハックされている。このままでは私の発明は全て盗まれて先に特許をとられてしまうに違いない」,こういうことを言っている人に「そんなことあり得ませんよ,大丈夫ですよ」と忠告してあげると,「いや,これは確実なことだ。証拠もある。さてはお前も〇〇の回し者だな!」などと言われた場合,これはかなり妄想に近いと言えるでしょう。 陰性症状というのは,具体的には,社会的なひきこもり,意欲・集中力の低下,異常な疲れやすさ,自然な感情を持てない,会話量の減少,複雑・抽象的な思考ができない,思考や行動がパターン化してしまうこと,などの症状です。陽性症状と比べると,慢性的な症状と考えていいでしょう。周囲の人からは「怠け者」「ゴロゴロしてるだけ」のように誤解されやすく,これも本人にはたいへんつらい症状です。 陽性症状は,患者さんにとって非常に気持ち悪く,怖く,しんどいものです。患者さんを翻弄し,消耗させます。一般的には,この陽性症状が強い時期を病気の活動期と考え,「発症」「増悪」「再発」と表現します。陰性症状は最初から存在することもありますし,寛解・再発をくり返すうちに悪くなることもあります(→こちらも見て)。 陽性症状はたいていはおクスリによく反応し,時間が経てば鎮静化しますが,陰性症状は難治性のことが多く,患者さんの社会復帰を大きく妨げることもあります。 陰性症状の中の一部の症状がこの病気の本態であって,陽性症状や他の陰性症状は病気の「結果」「表現」に過ぎない,という考え方もあります。また,陽性症状が必ずしも本人を苦しめるものではなく,より耐え難い苦痛からの救いになっている場合もあります。陽性症状/陰性症状という分け方ではなく,3〜5つの症状群に分けた方が病気の本態に近いという学説もあります。上にあげた症状論は一般的な考え方ですが,あまり形式的な見方だけでは患者さんの人間的な部分を見落としてしまうこともあります。「病気を見て人を見ない」ことのないようにしたいものです。 A:病気によって症状が出る際には,病気が直接に起こしている症状と,人が病気に必死で抵抗している表われとして出る症状とがあります。これは精神科の病気でも身体の病気でも同じことです。 肺炎では一般にセキ,痰,呼吸困難,発熱,全身倦怠などの症状が見られます。いずれもとても苦しい症状です。しかし,これらの中で肺のダメージの直接の結果として考えられるのは呼吸困難ぐらいで,セキや痰,発熱,全身倦怠などの他の症状はいずれも,肺に侵入した微生物や異物に対して生体が拒絶・防御やダメージの修復を行っている結果として現れてくる症状です。つまり「病気の症状」のかなりの部分が病気の直接の表われではなく,むしろいわゆる「生体防御反応」の結果であるわけです。 では,脳や精神に病気が起こった場合はどうでしょうか。やはり病気の直接の結果としての症状と,その人の病気に対する抵抗・防御反応の結果としての症状が現れてくるでしょう。実は,幻覚や妄想といった症状はこの後者として一般的な症状です。 その証拠として,他の精神障害,例えば躁うつ病やある種の神経症などでも幻覚・妄想は珍しくありませんし,老人性痴呆やてんかん,神経内科・脳外科的疾患でも幻覚・妄想が見られることがあります。症例によっては,この病気と全く見分けが付かないケースもあります。また,我々健常人でもある種の薬物や意識低下によって幻覚・妄想はいくらでも体験できます。つまり一般に「狂気」とされる症状は,この病気に特異的なものでは全くありません。 幻覚や妄想といった精神症状は,脳・精神にもともと組み込まれた自己防御のプログラムであり,脳や精神にある種の深刻なダメージが与えられた時に,自己防御やダメージの修復のためにこれが発動する,こんな風に考えてもらうと分かりやすいでしょう。もちろんこれには異論もあるかもしれません。幻覚や妄想がこの病気の直接の症状であり,その他の症状こそが2次的なものであるとする考え方の精神科医もいます。また,単純に目に見える症状しか「症状」として認めない先生もおられるかもしれません。 逆に,この病気が直接起こしている症状は,一部の陰性症状や「素因」として考えられている症状,つまり注意の分配がうまくいかないこと,思考や言動がまとまりにくいこと,周囲の出来事へのなじみがうまく行かず常にぎこちなさや緊張感がとれないこと,などであると考えられています。これらは本人にも周囲にもあまり明確な症状ではなく,治療によっても改善しにくい症状です。 そのため,本人も家族も主治医も幻覚や妄想のような目立つ症状を病気の本体ととらえ,これさえ治療すればよいと考えがちです。しかし,発熱に対してやたら解熱鎮痛剤を使ったり,下痢に対してとにかく強力な下痢止めを使えばいいと言うものではないのと同様,目立つ表面的な精神症状を抑えればいいというものではありません。 ただ,「治る」という言葉の定義によっては必ずしもそう言い切れない場合もあります。回復したばかりの患者さんは,一見そうは見えない場合でも,とても消耗しています。また,調子の悪かった時に受けた対人的・社会的ダメージはすぐには癒えません。これらが回復後もある程度の期間続くことはありますので,表面的な症状がなくなったからといって,カゼが治るように「ハイ治った」と言えるものではありません。 患者さんや家族によっては,早くこの病気から逃れたい一心で(この気持ちはよく分りますが),表面的な症状が消えた時点で早々に「治った,治った」と治療を打ち切ってしまうことがあります。幸いにして再発がなければ良いのですが,このような場合,患者さんは早くから無理をしてしまうため,たいていは再発して再入院になってしまいます。 はっきりした症状である「幻覚」や「妄想」はクスリによって比較的すぐに落ち着きます。大体数週間から数ヶ月といったところでしょうか。ただ,これらはあくまで表面上の症状で,根底にある症状はもう少し時間がかかることが少なくありません。つまりはっきりした症状が消えても,それだけで治ったとは言えないのです。 またこれらのはっきりした症状が落ち着いた後も,患者さんはまだかなり消耗しています。ひきこもりがちになったり,意欲が出なかったり,感情がにぶったような状態になってしまったりするのはそのせいもあります。これら全てを合わせて考えると,患者さんが調子を崩す以前の状態に近づくには,半年から数年はかかることがあります。 A:統合失調症の治療に使うおクスリは,何種類かに分類されますが,基本は「メジャー・トランキライザー(抗精神病薬・強力精神安定剤)」です。このおクスリは,脳内の特定の物質のはたらきを抑えることで,気分を落ち着かせると同時に幻覚や妄想といった症状を軽減させます。またこれらのおクスリには,症状が退いた後の意欲の低下や気分的なしんどさを軽くするはたらきを併せ持つものもあります。 「マイナー・トランキライザー(抗不安薬・穏和精神安定剤)」という種類のおクスリもよく使われます。これは文字通り不安に対してよく効くおクスリで,明らかな症状が退いた後にも残る不安やイライラ,落ち着かなさといった症状を軽減させることができます。中には気分の落ち込みにも効くおクスリもあります。 これら以外に,メジャートランキライザーの副作用を抑えるための「抗アセチルコリン薬(抗パーキンソン薬)」,抗てんかん薬(中にメジャートランキライザーと同様の作用を持つものがあります)がよく用いられ,時には抗うつ薬が使われることもあります。 また,メジャー・マイナートランキライザーのうち眠気を催す作用が強いものが「睡眠薬」として用いられます。当然ながら,糖尿病や高血圧など身体の病気がある場合はそのおクスリも併せて処方されます。 これらのおクスリに共通して言えることは,「対症療法である」ということです。とりあえず症状を抑え,身体と心に余裕と自己治癒力を取り戻させるのがこれらのおクスリの主目的です。決して症状がなくなったからといって勝手に服薬をやめてしまったりしないで下さい。クスリは症状を一時的に抑えているだけです。治るのは患者さん自身です。症状が消えたばかりの心はとても脆弱で打たれ弱くなっています。ちょっとしたストレスで症状が戻ってくることがあります。 A:上の質問にあるように,この病気の薬物療法は対症療法的な面が大きいので,症状再発の危険性が高いうちは予防的な服薬が必要です。どの程度危険性がなくなったところでおクスリを減らし,止めていくかはケースバイケースとしか言いようがありません。それは,幻覚とか妄想といった表面的な症状が消えた後に,目に見えない根本的な症状がどれくらい未解決で残っているかによるでしょう。また,主治医によっても違うかもしれません。大胆な先生はスパっとおクスリを止めるかもしれませんし,慎重な先生はその逆になるかも知れません。 ただ,いずれにせよ年単位の服薬は絶対必要と思って下さい。主治医に黙ってクスリを勝手に調整したり止めたりしないで下さい。仮にそれでうまく行っていても,それは危険な賭けです。もしおクスリを毎日決まった時間にのむのが難しければ,正直にそれを主治医に相談してみて下さい。最近は一日1〜2回の服薬でも一日中効果のあるいいクスリができてきています。 この病気の有病率,つまり何人に一人の割合でこの病気にかかっているかの割合は,全世界で,ほぼ100人に1〜2人の割合です。家族にこの病気の人がいる場合は,この確率がほんの少し上がります。全く同じ遺伝子を持つはずの一卵性双生児の場合でも,どちらか一人がこの病気になった場合にもう一人が発症する確率は(調査により数字は異なりますが)30-80%と,決して100%ではありません。つまり,「この病気になりやすさ」のようなものは確かに遺伝と関係していますが,決してそれだけでこの病気になるわけではありません。この病気のかなりの部分は遺伝とは関係なく発症しているように感じます(→「原因はなんですか?」)。 A:私は10年以上精神科医をしていますし,結構ディープな病棟に勤めていたこともありますが,この病気の患者さんに「殴られた」とかそういう経験はありません。暴力を振るわれた経験は多少はありますが,いずれも別の病気の患者さんでした。患者さんが症状に翻弄され興奮が激しい時には自己防衛のために必死で抵抗されることがあります(誰でも同じ状態に置かれればそうするはずです)。また無理矢理に病院に連れて行かれ,入院させられようとすればやはり誰でも必死で抵抗するでしょう。これは人に危害を加えるというのとは本質的に全く異なりますね。 私たちの社会では,長い間,この病気の人は社会から隔離されていましたので,誰もこの病気のことを,この病気の患者さんのことをよく知りません。ですから一般の人には,この病気の症状は,奇妙で理解しがたく訳の分らないものと映りがちです。「奇妙で理解しがたく訳の分らないもの」というのは,人々の好奇心を誘いますが,自分の身近にそれがあると人々は「何をされるか分らない」というような不安や恐怖を感じます。その結果,人々はこの病気の人をさらに隔離し遠ざけてしまいます。そして,さらに偏見が増長されます。悪循環です。 確かに,まれに精神症状が犯罪行為に結びつくことがあるのは否定できません。ただ,この病気の患者さんが事件を起こすと,通常の事件よりもセンセーショナルに報道されるのも事実です。その背景に「奇妙で理解しがたく訳の分らないもの」への好奇心や不安・恐怖があることは言うまでもないことです。私たちは関係者・当事者としてこの病気のことをなるべく正確に伝え,また少しでも一般の人がこの病気の患者さんと実際に接触できる機会を作っていくべきだと思います。 A:遺伝が一部関係していることは上の質問でお話しました。ただ,遺伝が関係しているのはこの病気の「素因」というか「なりやすさ」のようなもので,これだけで発症するものではありません。また「素因」の形成には遺伝以外の要因も色々はたらいており,実際,この「素因」は極めてたくさんの人が持っていると考えられています(あなたも?私も?)。 患者さんが落ち着いてから,発症するまでの経過を詳しく聞くと,大変な苦労をしてきている人が多いことに驚かされます。患者さんは,いつの頃からか,物事がスムースに行かない,対人関係がうまく行かない,周りの人が当たり前にできることが何だかうまくできない,というぎこちなさのようなものを感じます。この感じはどこへ行っても本人につきまといますので,患者さんは常に失敗しないように緊張していなければなりません。そしてたいていはこれを何とか乗り越えようと必死で努力します。中には不眠不休で超人的な努力をする患者さんもいます。 でも,もともと無理に無理を重ねてきていますのでこれはいつまでも続きません。どこかで破綻します。あるいは不意打ちのような出来事で強いストレスが加わって破綻してしまいます。この結果,もともとあった緊張感やぎこちなさと入れ替わるようにして,幻覚や妄想といった精神症状が現れてくることが多いようです。幻覚や妄想も患者さんにとって非常に苦しいものですが,それでも幻覚や妄想によって,それ以前の何とも言葉に出来ない苦しいぎこちなさや緊張感は軽減することが多いようです。 もちろんこれはありがちなケースを上げただけですので,実際の患者さんの発症の過程は千差万別です。ただいずれにしても,「素因」「慢性的なストレス」「(発症の)引き金」の3つがそろうことが発症の必要条件になっているようです。 そして現在のところ,「脳内の物質バランスの崩れやすさ」や「脳の機能のごく微妙なズレ」のようなものが「素因」で,その結果現れてくる「物事を受け入れ,行動する際の微妙な困難さ」が「慢性的なストレス」,これらから追い詰められていくことで脳内の物質バランスの崩れが決定的になることが「引き金」であると考えられています。 A:この病気は「遺伝」だけによってなるのではないし,「育ち方」だけでなるのでもありません。もちろん,もともとこの病気の「素因」を持って生まれてきた人に,わざわざ「慢性的なストレス」を加えるような育て方をすれば,この病気を発症する可能性を高めている,ということは言えるでしょう。でもそれだけで発症を説明できるものでもありません。 この病気は自分で病気であるという自覚が持てないことが多いので,子供さんがこの病気になると,家族はどうしても無理矢理にでも治療を受けさせようとします。その際に受けた心の傷が,小さい頃の想い出や「どうしてこんな病気になったんだろう」という想いと結びついて親を責める気持ちを強めるケースが多いようです。そして子供さんから責められ続けた親御さんがすっかり自虐的になってしまうこともあります。無理矢理にでも治療を受けさせることは決して間違いではありません(実際,そうせざるを得ないケースが多いのです)。ただ,病気が落ち着いた時にでも,そのことについてもう一度じっくり話し合うことが必要でしょう。主治医も,無理矢理に入院してもらわざるを得なかったケースでは,必ず後で何らかのフォローをしています。 A:この病気は,表面に出ている主症状によっていくつかのタイプ(病型)に分類されています。タイプによっては,これが同じ病気か?と思うぐらい受ける印象が違いますし,実際,この病気は「一つの病気」ではなく,共通の症状を示す「いくつかの病気の集まり」,つまり「症候群」であるという考え方が広がってきています。 などに分けられることが多く(本により少しずつ違います),上の2つを中核群,それ以外を周辺群という風に考え,中核群も妄想型と解体型を別物と分けて考えるようになってきています。というのも,実際に治療に対する反応や,病気の根本にある「慢性的ストレス」の質もかなり異なるからです。 A:メールによる相談を受け付けていると,このような相談を頻繁に受けます。中には非常に長文の詳しいメールを送って下さる方もおられるのですが(きっと書くのにすごく時間かかったと思います...),「ネット上での診断はできません。どうか思い切って病院に行ってみて下さい」としかお答えのしようがないのです。 この病気の有名な症状として「幻聴」とか「妄想」とかいうのがあります。また「離人感」とか「作為体験」なんていう言葉をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。言葉だけ聞くと,何かすごく異常でとんでもない症状のような気がするかもしれませんが,実はこれらの症状は誰にでも起こり得るものなのです。 例えば,脳に腫瘍や嚢胞(袋のようなもの),あるいはてんかんのような病気が生じたとすると,場合によってはこの病気と全く見分けがつかないケースがあります。また,心理的に非常に追い詰められたり,大きなショックを受けたりした際にも,離人感や幻覚は起こってきます。被害妄想的な心情は誰でも持ったことがあると思いますし,夢の中で私たちは日常的に解体した奇妙な体験をしていると思います。私たちの脳は誰の脳であっても,特殊な状態に置かれると,このように様々な精神症状を作り出すメカニズムを内在させています。 ですから,「幻聴」や「妄想」らしきものがあると言っても,この病気であるとは言い切れないのです。この病気の診断は,上にあげたような他の病気や特殊な状態を全て除外した上でしか成り立ちません。そしてそれは絶対にネット上では不可能なのです。 私たちは自分の心の中に起こることをどうやって自覚するのでしょうか。そんなことは当たり前のことで疑問にすることがおかしい,などと言わず一度じっくり考えてみて下さい。私たちは生まれてからこれまでずっと,「自分」でしかありません。他人になったことがある,という人はいないはずです。私たちは自分の目で見,自分の耳で聞き,自分で体験したことしか知りませんし,自分の心の中しか知りません。他人の目で見たり,他人の心を直接体験することはできません。でもこれだと,自分の心の中を他人と比べて調子がいいとか悪いとかは言えないはずです。 でも私たちは,一応,他人の心の中をある程度体験できますし,他人と同じものを見たり聞いたりはできます(できていると信じています)。これは,生まれてからずっと周りの人と(主に言葉のレベルで)コミュニケーションを繰り返してきたことによって,心の中にできてきた「信頼」によるものと考えられます。私の周りには世界がちゃんと存在して,人が存在して,同じものを同じように見,同じように聞いているはずだ,という「信頼」です。私たちはこの信頼によって自分の心を他人の心と比べることができ,周りの人と体験を共有できます。 ところが,この病気によって真っ先に障害されるのが,まさに心の中のこの部分なのです。周りの世界や周りの人たちと共有しているものへの心の中の信頼が失われてしまいます。そのためこの病気の症状が出てくると,患者さんは自分の心の中の出来事を,周りの世界や他人の心と比較対照して客観的にとらえることができなくなります。自分の心の中の出来事に囚われてしまって,自分の考えや感覚を訂正する心の余裕がなくなってしまいます。 例えば,もし私が今,「世界は今まさに宇宙人から侵略されようとしている,早く何とかしないと世界は滅んでしまう」という気持ちを抱いたとします。普通なら,周りの世界がいつもと何一つ変わりなく,周りの人たちもいつもと全く同じように過ごしていることから,「ああ,思い過ごしだったんだな」と自分の考えを訂正できます。しかし今まさにこの病気が発症しようとしている場合には,私の心の中は余裕を失っていて,周りの世界は非常に緊迫した「いつもと全く違った」様子に感じられ,人々は生気を失ったまるでロボットのような奇妙な感じに見えます。「もう宇宙人に身体を乗っ取られているんだ」と感じるかもしれません。周りのちょっとした物音は宇宙人の足音や何らかの裏工作をしている物音かもしれませんし,街を行く車のクラクションの音も何かのサインのように聞こえます。健康なあなたは笑うかもしれませんが,本当に自分の心にこういう事態が発生した時のことを真剣に考えてみて下さい。家族が「病院へ行こう」と言ってもそれは「宇宙人が自分の身体を乗っ取ろうとしているんだ」としか感じられないでしょうし,病院へ無理矢理連れて行かれて注射でもされたなら,本当に殺されるような恐怖を感じるでしょう。涙を流して「助けてくれ」と叫ぶ患者さんをあなたは笑えますか? A:この病気の難しいところは,病気の本態がはっきりと目に見える形でとらえられないことでしょう。「幻覚」や「妄想」といったはっきりした症状は表面的な症状に過ぎず,根本的な症状は,患者さんにも主治医にも家族にも見えにくいものです。ですから,患者さんや家族が「もう良くなっている」と判断しても主治医だけが「まだ危なっかしい」と感じていることはよくあります。この3者がうまくコミュニケーションできている場合はいいのですが,入院時のドタバタが心に傷を残していたり,もともとお互いに不信感があるような場合には,患者さんと家族の間の溝が深くなってしまったり,家族が患者さんを連れて帰ってしまって治療が中断したりすることもあります。 「入院」や「退院」に関して不満がある場合は,都道府県知事や人権擁護機関に病棟の中からでも連絡して異議申し立てできる制度がありますし,それ以前に主治医は説明を尽くす義務があります。どうぞ納得のいくまで話し合って下さい。 にも書きましたが,この病気に限らず精神に関わる病気では,症状が悪くなると「自分を振り返る心の余裕」がなくなり,自分が病気であることが分らなくなってしまうことがよくあります。 こうなってしまうと,患者さんはさらに幻覚や妄想といった症状に翻弄され,「病院へ行こう」という家族の言葉でさえ悪意や陰謀に満ちたたくらみに感じられてしまいます。特に,過去に病院とか入院治療に対してトラウマ(心の傷)があるようなケースでは,絶対に自分から病院へ行こうとはしないはずです(誰だってそうなるはずです)。このような際に家族としてはどうすればいいのでしょうか? まず,これまでに治療を受けたことがあり,かかりつけの病院や主治医が決まっている場合は,家族だけで受診し今後の対応を相談しましょう。おクスリの増量だけで乗り切れそうな場合は主治医が増量分を処方してくれるはずです。 これまでに受診歴が全くない場合でも,とりあえずご家族だけでどこかの病院を受診してもらって構いません。先生によっては「本人を連れてきてもらわないと...」と言われるかもしれませんが,連れて来れない事情を話せば相談にのってもらえるはずです。家族だけの来院でも何らかのおクスリを処方してもらえます。 問題は,おクスリだけではどうにもならず,どうしても入院が必要になる場合でしょう。入院となるとどうしてもご本人に病院へ来てもらわねばなりません。昔は病院のスタッフや主治医が睡眠薬の注射を持って「お迎え」に行くようなこともあったのですが,現在はそのような乱暴なことは決してしません。人権上大きな問題があるだけでなく,このようなひどい扱いが患者さんの心に傷をつくり,それが結局患者さんをまた病院や治療から遠ざけ,さらには家族や社会から孤立させたり,病気を長期化させたりすることが明らかだからです。 ある場合は少々強引にならざるを得ないこともあるでしょうし,患者さんを病院へ連れて行くため少々ウソをつかねばならないこともあるでしょう。ただ,あくまで本人が自分の意思で病院へ行くことがベストです。患者さんが病気の自覚を持ち自主的に病院を受診できるように説得する努力を決して怠ってはいけません。 この説得の際大事なことは,妄想のような「周囲が困っている症状」ではなく,不眠やイライラ,落ち着かない,身体の何らかの不調など「患者さん自身が困っている症状」に焦点をあわせることです。つまり「不眠を治すために病院へ行こう」とか「そのイライラを落ち着けるために入院しよう」とか少しでも本人が「病気を治すために病院へ行く」という意識を持ちやすいように説得することです。「あなたの言っていることは全部妄想だから,精神病を治すために病院へ行こう」と言われて「ウン」という人はまずいないでしょう。 また,やむを得ず患者さんにウソをついて病院へ連れて行ったり,強制的に入院させざるを得なかったような場合は,必ずそのことについて症状が落ち着いた後で患者さんに謝りましょう。もちろん,患者さんのために,治療のためにやむなくしたことです。それは患者さんもいつか分ってくれるでしょう。でも患者さんの心はとても傷ついています。心のどこかに家族や医療関係者への不信感は必ず残ります。そしてそれがまた服薬や通院の拒否,被害的な感情,そして再発へとつながることも多いのです。 精神科には「強制入院」の制度があります。上に述べたように,これはなるべく最後の手段として温存しておくに越したことはないのですが,周囲が強制入院に躊躇している間に治療のタイミングを逸してしまったり,患者さんの自殺など最悪の結果に至ることのないようにしなければなりません。そのためにも,とにかくなるべく早く精神科医に相談することが第一です。 A:幻覚や妄想といった症状は患者さん本人を翻弄し消耗させるだけでなく,家族や友人,ご近所さんといった周囲の人達をも巻き込んで振り回すような結果になってしまうことがあります。もちろんこれは病気がさせていることですし,患者さんも好きで病気になったわけではありませんから,患者さんを責めても仕方ないことです。しかし,だからといって巻き込まれっぱなしでも困るわけで,何らかの対処はしなければなりません。 まずあなたが患者さんの友人やご近所さんという立場にいる場合。この場合,患者さんの症状に本気で向き合うのは大変困難ですし,治療上も勧められません。症状に巻き込まれる人の数が多いほど症状はエスカレートしていきます。全ては家族の方に任せ,あなたはあまり係わり合いにならない方が良いでしょう。ですから対応のポイントは「いかに患者さんと距離をとるか」と「いかにご家族をサポートできるか」に絞られると思います。 患者さんと会って話をする,長電話するなどはできるだけ避けた方が無難でしょう。それでも接触を避けられず,幻覚や妄想に基づく話になってしまった場合は,「そんなことはあり得ない」とか「それは明らかに間違っている」といった説得や議論・対決は避け,「私にはそういうことは起こってないけどなあ」とか「う〜ん,ちょっと違うような気もするけどなあ」ぐらいの相づちにとどめましょう。また,ヘンに迎合して妄想的な話にでも「そうだね,その通りだね」などというのは症状を助長するだけなので避けるべき。 また患者さんの家族の方に対しては,「私のところへこんなことを言って来られました」とか「こんな様子でした」とかできるだけ本人に関する情報を伝えておくべきです。治療上とても重要な情報になるかもしれませんので。ご家族の前では知らん顔をしていて,友人にだけ症状を見せるなんていう患者さんも結構おられます(この場合,友人としての信頼を裏切るようでとてもツライものがありますが...)。 あなたが患者さんの家族である場合はもちろん係わり合いになることは避けられません。この場合できるだけあなたも病院について行き,主治医の先生に症状のことを報告して対処法を相談しておきましょう。 周囲にとっては単なる幻覚や妄想であっても,患者さん本人にとってはそれがまさに現実なのだということを決して忘れてはいけません。上に述べたように説得や議論・対決は避け,それは病気の症状なのだということが言外に分るような対応がベストです。 例えば悪口の幻聴を訴える患者さんに対して「そんな声全然聞こえないよ。幻聴でしょ」とストレートに言うよりは,「私にはそんな声や物音は聞こえてこないけど...先生がこないだ言ってた『空耳』じゃないかなあ。昨夜もあんまり寝てないでしょ」とソフトに言う方がいいでしょう。ただしご本人に「幻聴である」という自覚があるなら前者の対応でもいいでしょう。要するに結局はケースバイケースということになりますので,やはり主治医にきっちり相談するのがベストです。 A:原因はなんですか?にも書きましたが,この病気の原因は単一のものではなく,いくつかの要因が重なって「素因」を形成し,さらにそれに「慢性的なストレス」や「引き金」が重なって発症に至ると考えられています。そしてその一番もとになる要因はまだよく判っていません。いろいろな仮説がありますが決定的なものは見つかっていません。 なかなか原因を絞れない理由として,この病気が「症候群」であって「単一の病気」ではないことがあげられます。つまりある原因が見つかって一部の患者さんの発症をそれで説明できても,他の患者さんにはあてはまらないようなことが多々あるわけです。もちろん最適な治療法も患者さん一人一人によって異なってきますので,我々精神科医はたくさんの治療法と治療薬を適宜組み合わせて治療を行っているわけです。ある一つの原因だけについて治療すれば治るというものではありません。 ところが世の中には「これで分裂病が治る」と称して独自の治療法を掲げる人たちがいます。ある程度科学的な背景を持っているものもありますし,宗教的な色合いが強いもの,何だか理解不能なものもあります。私たち精神科医は「単一の治療法によって全ての分裂病患者を治療することは不可能である」と考えていますので,こういった民間療法や食事療法を積極的に肯定はしません。でも,心身に害があったり明らかにデタラメなものでない限り否定もしません。私たちが現在行っている標準的な治療だってかつては「実験的な」ものであったわけですし。 もっとも精神科医による一般的な治療や服薬を排除するような治療は決してお勧めできません。確かに現代の精神科での治療には問題点や限界はありますが,一定の効果があることは実証されています。これを最初から拒否して全く実証性の乏しい方法に頼るのはあまりにリスクが高すぎます。また現代の医学を最初から否定するというのは「科学」であることを自ら止めているのと同じです。実験・データ収集・統計処理によって有効性を検定するという手続きをせずにいきなり「絶対に効きます・治ります」というのは「科学的に実証できない」からでしょう。 おクスリをキチンとのんで,ちゃんと主治医のもとに通院しながら行うのであれば,別に食事療法や信仰による治療を併用してもらっても構いません。ヨガでも漢方でも結構です。ただ,過ぎたるは及ばざるが如し。あまりのめり込まず,極端に走らないようにして,ボチボチ治療していきましょう。 |
[ 92] 統合失調症 - Wikipedia
[引用サイト] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B1%E5%90%88%E5%A4%B1%E8%AA%BF%E7%97%87
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古代ギリシャからこの病の存在は知られていたが、病因は2008年現在においても不明。病因については、神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰によるという仮説をはじめ、様々な仮説が提唱されている。治療では、1950年代にフランスでクロルプロマジンという薬物が一部の患者に効果があることが発見され、これを契機に抗精神病薬による薬物治療が広く行われるようになった。1990年代後半からの非定型抗精神病薬の使用や、効果的な急性期治療、社会復帰のため福祉制度の整備などにより、初発患者の入院期間は短縮され、以前よりも軽症化しつつあると言われている。しかし一方で、薬物療法が部分的にしか効果を示さず慢性化する患者も少数であるが存在することも事実である。 なお、日本において統合失調症患者は犯罪を犯した場合でも無罪とすることが法律により規定されている。 しかしながら、「統合失調症」の意味する内容は、それまで統合されていた精神が調和を失うことによって分裂・崩壊した見解・思考・行動を来たすということに変わりはない。 2002年8月、「精神分裂病」という名称が、精神そのものが分裂しているというイメージを与え、患者の人格の否定や誤解、差別を生み出してきた経緯があることから、日本精神神経学会の決議により統合失調症と改名された。同月、厚生労働省が新名称の使用を認め全国に通知した。 思春期から青年期に発症することが多く、小児期の発症や老年期での発症もみられる。一般に破瓜型(解体型)に比べて妄想型は発症年齢が遅いとされ、30-40代での発病が多い。男性と比較して女性は平均発症年齢が遅く、閉経後にも小さな発症のピークがある。 研究対象となった地域・人種などにより罹患率の差があるが、診断基準にも左右され、その意味は明らかではない[3]。アイルランドでの地方間における罹患率の差も議論の対象となっている。 社会経済的地位の低い層に罹患率が高いが、これは患者が病気のために社会的に不利な立場にあるためと理解されている。 特に統合失調症患者の薬物乱用者の割合は、最初の入院以前に非患者の2倍に上った。薬物乱用をしていた統合失調症患者の乱用薬物のうち、88%は大麻であった[13]。 統合失調症の患者は関節リウマチに罹患しにくいことが知られている。最近の研究[14]によれば、およそ4倍前後の差があるとされる。 急性期の後に訪れることが多い自殺などを招くことがあるので注意が必要である。治療法はうつ病にほぼ準じる。 陰性症状が1年以上持続したもの。陽性症状はないかあっても弱い。他の病型の後に見られる急性期症状が消失した後の安定した状態である。 陰性症状が強く現れ、陽性症状はほとんど見られない。破瓜型に似ているが、自我意識の喪失がない点が異なっている。 一卵性双生児研究において一致率が高い(30 - 50%)が100%ではないことなどから、遺伝的要因と環境要因両方が発症に関与していると考えられている。遺伝形式も不明で、信頼できる原因遺伝子の同定もされていないが、約60%が遺伝によるとの報告[15]がある。しかし明確な原因は未だに確定されておらず、いずれの報告も説の域を出ない。 ドーパミン仮説:中脳辺縁系におけるドーパミンの過剰が、幻覚や妄想といった陽性症状に関与しているという仮説。実際にドーパミンD2受容体遮断作用をもつ抗精神病薬が陽性症状に有効であること、死後脳研究、陽電子放出断層撮影(PET)などの脳機能画像を用いた研究からも支持されている。 グルタミン酸仮説:麻酔薬として開発され、のちに精神異常の副作用の為使用が断念されたフェンサイクリジンを投与すると、統合失調症様の陽性症状及び陰性症状がみられたこと、フェンサイクリジンがグルタミン酸受容体(NMDA受容体)の遮断薬であることがのちに判明し、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)の異常が統合失調症の発症に関与しているという仮説。実際に欧米を中心に従来の抗精神病薬とグルタミン酸受容体(NMDA受容体)作動薬であるグリシン、D-サイクロセリン、D-セリンを併用投与すると抗精神病薬単独投与より陰性症状や認知機能障害の改善度が高くなることが報告されている。将来的に、グルタミン酸受容体に作用する抗精神病薬の開発が期待されている。 発達障害仮説:統合失調症の初発患者において脳の容積が一部低下していたり、死後脳において脳の構造異常が見られたりする例があることから、脳の発達段階での何らかの障害が関与しているとする仮説。 その他、ウイルス説、前頭葉機能の低下仮説など様々な仮説が唱えられている。妊娠初期にインフルエンザに罹ると生まれてくる子供が統合失調症になる確率が3倍になるという研究[16]がある。 思考、知覚、自我意識、意志・欲望、感情など、多彩な精神機能の障害が見られる。大きく陽性症状と陰性症状の二つがあげられ、その他の症状に分けられる。 連合弛緩、滅裂思考(話の脈絡がなくなる)。顕著になると言葉のサラダ(意味のない単語の羅列を発する)といわれる状態になる。 他人にとってはありえないと思えることを事実だと信じること。妄想には以下のように分類される。一人の統合失調症患者において以下の全てが見られることは稀で、1種類から数種類の妄想が見られることが多い。また統合失調症以外の疾患に伴って妄想がみられることもある。関連語に妄想着想(妄想を思いつくこと)、妄想気分(世界が全体的に不吉であったり悪意に満ちているなどと感じること)、妄想知覚(知覚入力を、自らの妄想に合わせた文脈で認知すること)がある。 また、上記の妄想に質的に似ているが、程度が軽く患者自身もその非合理性にわずかに気づいているものを〜〜念慮(被害念慮、注察念慮)という。 幻覚を体験する本人は外部から知覚情報が入ってくるように感じるため、実際に知覚を発生する人物や発生源が存在すると考えやすい。そのため、「悪魔が憑いた」、「狐がついた」、「霊が話しかけてくる」「宇宙人が交信してくる」「電磁波が聴こえる」、「頭に電波が入ってくる」、「脳の中に装置を埋め込まれた」などと妄想的に解釈する患者も多い。 幻聴はしばしば悪言の内容を持ち、患者が「通りすがりに人に悪口を言われる」、「家の壁越しに悪口を言われる」、「周囲の人が組織的に自分を追い詰めようとしている」などと訴える例は典型的である。 自己と他者を区別することの障害。自己モニタリング機能の障害と言われている。すなわち、自己モニタリング機能が正常に作動している人であれば、空想時などに自己の脳の中で生じる内的な発声を外部からの音声だと知覚することはないが、この機能が障害されている場合、外部からの音声だと知覚して幻聴が生じることになる。音声に限らず、内的な思考を他者の考えと捉えると考想伝播につながり、ひいては「考えが盗聴される」などという被害関係妄想につながることになる。 自分が統合失調症であるという診断を認めない(いわゆる「病識」がない)、あるいは医師に対する不信感などから病識が不足している患者が多い。(アメリカでの400人以上の精神障害者を対象にした調査では統合失調症患者の60%、統合失調情動障害患者の約25%に病識がなかった。つまり、「本当は病気で無いけれど強制されて治療を受けている」、「本当はどこも悪くない」、といった症状が見られるという事である。[17]) また、遂行能力(複雑な仕事や課題を順序だてて行ったり、同時に二つの課題を行うことなど)、社会的な状況の判断能力、将来に対する計画性など、現実検討力が通常の範囲を逸脱する程度に低下している患者も多い。 外来治療と入院治療に分けられる。薬物療法が大きな柱となるが、その他の治療法も病相の時期(急性期、慢性期など)に応じて適宜選択される。いずれにせよ、専門医(精神科医など)に受診、相談することが望ましい。 支援者として、精神科医・精神保健福祉士・作業療法士などが専門職としてあげられる。 統合失調症のみならず精神障害の治療や保護、社会復帰などは、一般に精神保健福祉法にのっとって行われなければならない。 主にドーパミンD2受容体拮抗作用を持つ抗精神病薬(日本では20数種類が使用できる)の投与が、陽性症状を中心とした症状の軽減に有効である。近年、従来の抗精神病薬よりも、副作用が少なく陰性症状にも有効性が高いなどの特徴をもった非定型抗精神病薬と呼ばれる新しいタイプの薬剤(リスペリドン、ペロスピロン、オランザピン、クエチアピン)が開発され、治療の主流になりつつある。さらに、最近アリピプラゾールが加わり、日本では現在5種類の非定型抗精神病薬が使用可能となっている。ただ、非定型抗精神病薬が治療の質を向上させたのは事実であるが、新たな問題もある。副作用面では、オランザピン、クエチアピンが稀に高血糖・糖尿病を誘発することがあるなどの新たな副作用にも注意が必要である。また、医療経済的に見るとオランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなどの薬価が非常に高く設定されていることにも批判的な意見もある。 精神病薬の一般的な副作用として、黒質線条体系のドーパミン拮抗作用によるパーキンソン症候群、錐体外路症状、アカシジア、ムスカリン拮抗作用による便秘、口渇、眼のかすみ、抗ヒスタミン作用などによる眠気、体重増加など、抗アドレナリンα1拮抗作用による低血圧が生じることがある。また、統合失調症に抑うつ症状や強迫症状を伴う場合などに抗うつ薬を、不安症状が強い場合に抗不安薬を、不眠が強い場合に睡眠薬を併用することもある。 薬物療法によって陽性症状が軽減しても、自らが精神疾患に罹患しているという自覚(いわゆる「病識」)を持つことは容易ではない。病識の不足は、服薬の自己中断から再発率を上昇させることが知られている。病識をもつことを援助し、疾患との折り合いの付け方を学び、治療意欲を向上させるために心理教育を行うことが望ましい。また、患者本人のみならず、家族の援助(家族教育)も行うこともある。精神保健福祉士が主に担当。 統合失調症を有する患者は、陰性症状に起因するためと、社会的経験が不足しがちなことにより、社交、会話などの社会的技能(ソーシャル・スキル)が不足していることが多い。それらの訓練として、ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)を行うことがある。デイケアプログラムの一環として行われることが多い。精神保健福祉士・作業療法士が主に担当。 絵画、折り紙、手芸、園芸、陶芸、スポーツなどの作業活動を主体として行う治療。非言語的な交流がストレス解消につながったり自己価値観を高めたりする効果がある。デイケアプログラムの一環として行われることが多い。作業療法士が担当。 薬物療法と並行して、疾患の心理的な受容、疾患や治療に伴い経験した喪失体験の受容などを援助するために個人精神療法を行うこともある。臨床心理士が主に担当。 治療や社会復帰をすすめるために必要な福祉制度、精神保健福祉法の活用、様々なアドバイスなどの社会的援助を、精神保健福祉士(精神医学ソーシャルワーカー;PSW)などが支援する。看護師と精神保健福祉士が協働する訪問看護などもある。 難治例や緊張病などで興奮が著しく緊急を要する場合や、重篤な抑うつ症状を伴う例では電気けいれん療法を行うことがある。その他、認知行動療法を行うこともある。 例えば、重度の骨折をした場合、一般的に診断、治療、回復、リハビリ、寛解という段階を経る。この中でもリハビリは困難を伴う一方大変重要な段階であるが、この疾患にもこれと同じことが当てはまる。 経過中に自殺を図る患者もいる。特に患者が喫煙者の場合、自殺企図の危険は有意に高くなる[18]。陽性症状が強い時期に、幻聴から逃れたり妄想のために自殺をする患者もいるが、陰性症状しか見られない段階でも思考の短絡化によって少しの不安でも耐えられずに自殺してしまうこともある。 統合失調症の予後については、「進行性経過を取り、ほとんどが人格の荒廃状態に至る」というイメージないし偏見が今日もなお残っている。これは事実に反している。 科学的な長期予後調査によれば、統合失調症の長期予後は極めて多様であることが明らかとなっている。おおむね、約3割の患者が元の生活能力を回復し、約5割の患者が軽度の残遺症状持ちつつも生活能力が若干低下する程度に安定し、約2割の患者は中等度から重度の残遺症状を残し生活に支障をきたすとされている。過去(特に薬物療法がなかった時代)に比べ、全体的に予後はかなり向上しているといわれている。 病型別に予後を見ると、緊張型や妄想型では、幻覚妄想などの症状の方が抗精神病薬に反応しやすく、予後がよく、破瓜型や単純型などの陰性症状には、治療の効果が得られにくいため予後が悪いと一般的に言われている。ただし、こうした傾向はあるが、妄想型などでも治療に反応しない例も稀ではなく、病型により機械的に予後が予測できるようなものではない。 精神科・精神神経科等。神経科や心療内科を標榜している病院でも精神科等と同じ診察内容になっている施設もある。 画家、イラストレイターのルイス・ウェインは57歳で統合失調症を発したが、その後も絵を描き続け特徴的な作品を数多く残している。発症以前のウェインの絵は比較的おとなしい色彩と具象的な画調であったが、発症後には原色を帯びた色彩と抽象的な画調の作品が見られる。しかし統合失調症の患者が必ずしもこのような画調の変化を起こすわけではない。例えば晩年に統合失調症を患った高村智恵子が療養当時制作したとされる紙絵は、比較的素朴なものが多い。 ジョン・ナッシュは統合失調症の発症により自らの研究を中断したが後に克服、ノーベル経済学賞を受賞するに至っている。ただし、受賞の理由とされた論文は、発病以前に発表されたものである。 草間彌生は少女時代より統合失調症を病み、繰り返し襲う幻覚や幻聴から逃れるために、それら幻覚や幻聴を描きとめる絵を描き始めた。その後現代アートの旗手との高い評価を得て、2006年には日本人女性としては初めて高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した。 詩人にして思想家のフリードリヒ・ヘルダーリンは統合失調症を発病し、その生涯の終わりを塔に幽閉されて過ごした。 この為彼の病気の彼の詩への影響が指摘されている。 この項目「統合失調症」は、医学に関連した書きかけの項目です。加筆・訂正などをして下さる協力者を求めています(ポータル 医学と医療/ウィキプロジェクト 医学)。 |
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